『 第9地区 』 (2009)
監 督 : ニール・ブロムカンプ キャスト : シャルト・コプリー、デヴィッド・ジェームズ、ジェイソン・コープ、 ヴァネッサ・ハイウッド、ジョン・ヴァン・スクール、マリアン・フーマン、 ルイス・ミナー、マンドラ・ガドゥカ、ユージーン・クンバニワ、 ケネス・ンコースィ 新鋭のニール・ブロムカンプ監督が、自作短編『Alive in Joburg』をリメイクしたSFアクション。異星人の居住区として、実際に南アフリカのスラム街で撮影が行われている。製作は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン。 南アフリカ上空に正体不明の宇宙船が現れたことから、「難民」の彼らと人間の共同生活が始まった。争いは絶えず、共同居住区「第9地区」はスラムと化す。そして2010年、「難民」のさらなる増加を懸念した超国家機関MNUは、彼らを「第10地区」の強制収容所へ移す計画を立てる。
Good!
・ 人間の傲慢さや嫌な部分がしっかり描かれていたと思います。無名の俳優、ヨハネスブルクというマイナーな土地、さらには低予算という条件でここまでの作品が作れるとは。不気味なエイリアンたちは一見の価値あり。
・ 効果的なドキュメンタリータッチが荒唐無稽な設定にリアリティーを与え、観る者を作品世界に巧みに取り込んでくれる。痛々しくグロテスクで、顔を背けたくなるほどなのに、それでも惹きつけられてしまう。
・ 何と言っても主人公ヴィカスがいい。「人類で最もツイてない男」である彼の苦難が作品の根幹を成しているのだが、徹底して利己的な小心者として描かれており、嘘臭さを感じさせない。この役者さん、プロではないそうで……ビックリ。
・ 「人間じゃないからいい」と云う建前で、平然と宇宙人を虐待する民衆&軍人の感覚がとても恐ろしい。宇宙人と地球人の立場&価値観が反転する皮肉な展開が秀逸。
・ いい意味で意表を突かれてしまった。無茶苦茶なところもあるけど、途中から宇宙人側に肩入れしている自分がいたりして。「人間サイドの自分は、ここで笑ってもいいのかな?」と自問させられるあたり、本当に「巧い」映画。
・ 着想は満点。あと、南アフリカの現実がこの映画のエッセンスとなっている。アパルトヘイトだった国の犯罪率最悪の都市で撮られた、という事実が凄い説得力を醸している。とにかく、この手のSF映画は画面で「おおっ!」と言わせたもの勝ち! そういう意味で、すこぶる気色悪くて気持ち悪いこの映画は最高。
・ 宇宙人たちの、不気味な容姿ながらも妙に人間臭いところが好き。缶詰を盗んだり、立ちションしたり、飲んだくれてたり(笑)。
・ とにかく展開がスピーディー! 冒頭から息つく間もなく話は進み、途端に事態が緊急性を帯びてきて、怒涛のクライマックスを迎えたかと思うと、一気に衝撃のラストへとなだれ込む。この展開の早さは、ひとえに主人公の性格設定に起因する。何しろこの主人公、行動が早い! この映画の面白さは、主人公ヴィカスが担ってます。
・ 「何て新しい映画なんだ!」と感動してしまった。SF映画としての新機軸を開拓した、まさにパイオニア的な作品。無数の映画を観ていると、稀に「物凄い作品を観てしまった」と思うときがある。この映画もその一つ。
・ 「コミュニケーションできる」ってのは友好関係を築く上で本当に重要なんだなぁと思った。他の映画のエイリアンに感情移入できないのは、彼らが一方的に襲うだけの存在だからで、当作のエイリアンに共感できたのは主人公と意思を疎通させ、理解し合えたから。
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No good
・ ドキュメンタリーを装うならもう少し緊張感、恐怖感、絶望感を出して欲しい。奇抜な設定とかパワフルな展開の面白さが、ドキュメンタリー風にすることで却って薄まっているような気がする。魅力を半減させてまで本物っぽく見せる必要はない。
・ 人類の残酷さをクローズアップして、皮肉を見せたいのは分かるが、あまりに極端過ぎる。雑な設定やご都合主義のストーリーと相まって、単なるB級スプラッターになっちゃった。
・ 『ザ・フライ』を思い出した。決して悪くはないのだが、かといって二度と観たいとも思わない。ラストもイマイチ。
・ 何を訴えたいのかまるで分からない。28年もの間、「エビ」と呼ばれるエイリアンがどんな生活をしてきたのか、居住区上空の宇宙船はどうなっていたのか、互いの言語をどう理解し合っているのか等、細かい説明が一切省略され極めて雑な作りになっている。
・ テレビでは流せないだろうグロいシーンもさることながら、主人公を含め、人間側にはまともな奴が一人としていない。人の闇の部分にスポットを当てたいのだろうが、恣意的過ぎるだろう。
・ もしエイリアンが人間だったら、とても最後まで観続けられません。こんな人種差別、虐殺を延々見せられて、どうして「面白かった」と言ってる人がいるんだろう?
・ メッセージめいたことは何もありません。アパルトヘイト云々も単に南アが舞台なので、隔離されてる宇宙人たちを設定に重ねてみただけです。『ザ・フライ』みたいな宇宙人、『アバター』に出てきそうな短絡傭兵、しまいにガンダムまで出てきてドンパチ合戦! もう勝手にやってろって感じです。
・ ストーリーは陳腐、映像も特筆すべきものはなし、設定も練り込み不足……何故これがアカデミー作品賞にノミネートできた? 終始これでもかと汚らしい悪趣味な映像が流れ続けるのには本当に辟易した。
・ いま流行り(?)の手ブレ画像。これだけ異星人がいれば異星人の代表がいそうなものなのに、いない。主人公がたまたま出会った異星人が凄い奴。リアルさに欠けるドキュメンタリーって一体……。
・ ちょっとストーリーに無理があるのでは? 今までのエイリアン物から発想を変えたのはいいが、高度技術を持つエイリアンたちが何故あんな扱いを受け入れてるんだ? その他諸々、納得のいかない所が多いです。ついでに、この作品を観ながらの飲食はオススメできません。
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