『 17歳の肖像 』 (2009)
監 督 : ロネ・シェルフィグ キャ スト : キャリー・マリガン、ピーター・サースガード、ドミニク・クーパー、 ロザムンド・ パイク、エマ・トンプソン、アルフレッド・モリーナ、 カーラ・セイモア、オリヴィア・ウィリアムズ、サリー・ホーキンス、 マシュー・ ビアード イギリスの人気記者リン・バーバーの自叙伝を映画化。ベストセラー 作家のニック・ホーンビィが脚本を手掛けた青春ムービー。第82回アカデミー賞では作品賞、主演女優賞、脚色賞にノミネートされた。 1961年のロンドン郊外。16歳のジェニー(マリガン)はオックスフォード大学を目指す優等生。ある日ジェニーの倍以上に 年の離れた男性デヴィッド(サースガード)と出会い……。
Good!
・ 原題に「An Education」とあるように、いわゆる机で勉強をすることだ けが教育なのではなく様々な経験を通じて成長していくこともまた教育であることを教えてくれる映画です。まだ閉塞感の漂うイギリス社 会の空気がこの物語のほろ苦さ、そしてキャリー・マリガンの存在感溢れる演技と上手くマッチしていて惹きつけられました。
・ 演出は隅々まできっちりと揺れのない完璧さを感じる。揺れる17歳を演じ たキャリー・マリガンも立派だが、ほとんど静的な演技を要求されたピーター・サースガードの深く広がりのある大きな演技は息を呑んで しまった。両親を始め、大人の世界での友人役だった俳優陣も特筆ものの演技。完成された映画だと思う。
・ 思春期は、大人のラッピングになかなか気付かない。包装紙の美しさに惹 かれて、自分もそれに巻かれたりする。一方、大人は自分がラッピングだけになったことに自覚がなかったりする。カラッポだから、包装 紙の穴開きにも気づけず、やがて子供に見破られる。
・ ヒロインは女子高生ですが、同年代の女の子よりも、大人たちのほうが共 感できるのではないかと感じました。誰もが通る道だと思いますが、高校生くらいの時って自分が知らない世界を知っている人たちがやた らカッコよく見えるし、新しい世界を知ってしまったらそれまで自分がいた世界、自分がやってきたことが妙に小さく見えてしまうんです よね。
・ ストーリーはどうってことないですが、もともとそういう主題でもないん でしょう。原題の"An Education"が大人への"学び"をあらわしていることがストレートに伝わってくるしっとり味わえるいい映画だと思い ます。
・ これはかつて少女だった女性のための映画だと思う。ヴァージンを無くす か無くさぬかを自分で選べる立場だった少女時代を持つ女性が、ただただ懐かしく感傷的に繊細に美しい気持ちで観ればいい。親、先生、 友人、ボーイフレンド…など様々な立場の人とのやりとりを自分の過去と比べながら、そして結果どんな現在を過ごしているかを確認しな がら。
・ 当時のロンドンの生活文化や、役者陣の抑えた好演を眺めるだけでも楽し い作品。それと選曲がお見事。特にF・クレイマーの軽快なピアノがいい。
・ 若さゆえの失敗は罪ではなく甘美なもの。それもまた真実だと教えてくれ る。確かに何がしかの過ちがあった筈なのに、この映画は「何が悪い」とは言ってくれない。肯定も否定も無く少女の目を通して等しく穏 やかに描写される。
・ 失敗を経験しなければ人生は学べない。そういった意味でも主人公のジェ ニーの選択は決して無駄ではない。若いうちはいくらでもやり直せる。
・ まず美少女高校生を演じ、アカデミー主演女優賞まで取ったキャリー・マ リガンについてですが、映画が始まった直後は「ちょっと高校生役は無理なんじゃ……」と思っていたのですが、場面場面で彼女が見せる 表情がとても魅力的だったので、最後にはジェニーがめちゃ可愛いと思える程に。父親が差し出す紅茶とビスケットが、放蕩生活で味わっ た豪華な食事より美味しそうに見える所に、この映画の言いたい事が詰まっている気がします。
No good
・ 監督とプロデューサー2人が女性というのが色濃く出ている作品。主人公と 歳が近い女性ならば共感もできようが、歳が離れれば離れるほど感情移入はジェニーよりも高校教師に移ってしまう。
・ たとえ大きな痛手を負おうとも、頭の良い人間は、そんな腐れ事など肥や しにこそすれ、転落の入り口などになりはしないしないというエリート成功者の優越心がいささか鼻持ちならない。
・ いくら青春は時代を越えると言っても、やはり古臭い印象が漂う。何故こ の映画が現代に必要だったのか。現代に昇華する何かが不足しているように思えてしまったのは自分だけだろうか。
・ デヴィッド役はミスキャスト。腹周りに贅肉のつきまくった体を見せられ ると、一気に映画が生々しくイヤラシさを帯びる。ラストも凡庸で甘い。
・ 最初から最後まで退屈なシーンのないまま完結を迎えるのだからロネ・シ ェルフィグの演出力を低く見積もることはできない。だが心情的にはまったく同調できない映画だ。そもそもこの作品を“An Education” などと臆面もなく題せることに神経を疑う。
・ 観終わったあとに余韻に浸れない。あの場面が目に焼き付いているとか、 あの時の俳優の表情が抜群だったという映画特有の快楽が少ない。父親とデヴィッドの絡みも感情移入できない。父親の生い立ちをもっと 描いておくべきで、そうする事によって物語に奥行き感がでるはず。
・ 邦題は別のものにしたほうが良かった。「17歳の~」って他にもたくさん ありそうだし、単純に主人公の名前がジェニーだから「肖像」をもってきただけじゃないの?
・ 退屈な人生の対極にあるものが、オークション・ドッグレース・ナイトク ラブという、極めて薄っぺらい物でしかないのがアホくさい。
・ 原題はEducation。社会勉強が大事ってことかな。ストーリーは特筆できる 部分はなく、波乱もない。「Education」というテーマに重みを感じたわけでもなかった。ありがちな作品。
・ 娘を持つ身の立場では、この映画に低評価を付けざるを得ない。映画と現 実、混同するのはおかしいけれど、それでもこの娘の父親の人生観や、デヴィッドへの対応には納得できず不快感すら感じてしまった。
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【関連作品】 『幸せになるためのイタリア語講座』 (ロネ・シェルフィグ監督) 『プライドと偏見』 (キャリー・マリガン、ロザムンド・パイク出演) 『フライトプラン』 (ピーター・サースガード出演) 『ニュースの天才』 (ピーター・サースガード出演) 『仮面の男』 (ピーター・サースガード出演) 『マンマ・ミーア!』 (ドミニク・クーパー出演) 『007 ダイ・アナザー・デイ』 (ロザムンド・パイク出演) 『メン・イン・ブラック3 』 (エマ・トンプソン出演) 『新しい人生のはじめかた』 (エマ・トンプソン出演) 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』 (エマ・トンプソン出演) 『ラブ・アクチュアリー』 (エマ・トンプソン出演) 『いつか晴れた日に』 (エマ・トンプソン主演) 『ジュニア』 (エマ・トンプソン出演) 『父の祈りを』 (エマ・トンプソン出演) 『日の名残り』 (エマ・トンプソン出演) 『ハワーズ・エンド』 (エマ・トンプソン出演) 『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂 』 (アルフレッド・モリーナ出演) 『ダ・ヴィンチ・コード 』 (アルフレッド・モリーナ出演) 『スパイダーマン2』 (アルフレッド・モリーナ出演) 『“アイデンティティー”』 (アルフレッド・モリーナ出演) 『死ぬまでにしたい10のこと』 (アルフレッド・モリーナ出演) 『マグノリア』 (アルフレッド・モリーナ出演) 『マーヴェリック』 (アルフレッド・モリーナ出演) 『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』 (アルフレッド・モリーナ出演)
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